2023年06月30日 #邦キチー1グランプリ エントリー
『ア・ホーマンス』(1986年/東映 キティ・フィルム)
(ハリウッドでの脚本家ストなどと絡めつつAI時代だな…みたいなマクラの会話から)
「東映がAI松田優作を作ったというニュースがかつてありましたね部長」
「ああ、あったな。デジタルアクターの有用性と問題性は世界中で話題だ」
「遡ること1986年に今日の事態を想像していた作品があるのですよ…それが松田優作主演にして、唯一の監督作である映画…『ア・ホーマンス』!」
「し、知らん!…と言いたいところだがさすがの俺も気になるぞ、松田優作唯一の監督作と聞いては」
「物語は二大暴力団の抗争で荒れに荒れた新宿に、優作演じる記憶喪失の謎の男がフラリと現れるところから始まります」
「これに限った話じゃないけど、昭和の新宿荒れ果ててるな…」
「暴力団の幹部・石橋凌(この作品でキネマ旬報新人男優賞を受賞しております)は抗争に明け暮れる中で、どこに与するわけでもなくしかし事あらば人間離れした強さを見せる優作の、風のように自由な生き様に惹かれていき、彼を“風(ふう)”さんと呼んで、奇妙な友情を育んでいきまする。そうした中、暴力団の組長が殺されたり抗争はきな臭くなっていきます」
「おっ黒澤明『用心棒』のパターンか?あのメソッドは有効だからいろんな映画で使われているからな…」
「手塚理美のよくわからない場面や、一度見たら忘れられないポール牧の演技は是非ともその目で確認していただきたいのですが…ともあれ、いろいろあって石橋凌はポール牧の送り込んだヒットマン達に殺されます!それまで感情の起伏を見せなかった松田優作が怒りに燃えヒットマンへの反撃に出ます!ここからわりと長めに…執拗に…揺れる手持ちカメラでヒットマンを追い詰める優作のアクションです!」
(この映画、なんかやたらカメラが動くのです!)
(うむ、素人監督作あるあるだな)
「そしてここからが『ア・ホーマンス』最大のサプライズなのですが…言っても、よろしいでしょうか?」
「1986年の映画のネタバレを気にするヤツがこの漫画読んでるわけないだろ」
「戦いの末“風さん”の皮膚の下から現れたのは…メタリックボディ!なんと!松田優作の正体は…ロボットだったのです!」
「そ…それはもしかして…ター…」
「ちなみに公開時のポスターではこのように特徴的なサングラスをしているのですが、本編中でずっと掛けているわけではありませぬ」
「いやターミネーターだろ!」
「たぁみねぇたぁ…とは?」
「それは…さすがに知ってるだろ!」
「この映画、原作/狩撫麻礼 作画/たなか亜希夫 による劇画作品が原作で、みんな大好き漫画原作映画でもあるのですが…(電子書籍がふつうに買えます)」
「好きなのは主にお前だ!しかしまぁ漫画原作ならターミネーター風味もわからんでも…」
「原作漫画にはロボット要素などカケラもありませぬ!おそらくはこれも優作の奔放なイマジネーションが描き出したものなのでありましょう!」
「何でもかんでも松田優作のせいにするな!」
「…そして、ここからはあくまで私の想像である事をあらかじめお断りしておきます」
「ここまでが全部事実みたいな言い方やめろ」
「翌年公開の映画『スケバン刑事』(1987年/東映)では…なんと、劇場版ボスの伊武雅刀が最後の最後でア・ホーマンス同様に実は機械の体だったことが明かされるのです!これは…部長のお好きな“オマージュ”でありまするよ!」 「ターミネーター!クソッ1980年代のクリエイター、ターミネーター好き過ぎだろ!」
(主題歌/ARB『AFTER '45』が流れつつおしまい)